【速読の秘密】本を読むスピードは何で決まるか?

学習法・記憶法

この知識はこんな方におすすめ

  • 本を読むのが遅くて・・・
  • より読書スピードを速めたい

魔法のような速読って存在するの?

今回は、世の中に出回っている速読のテクニックがほとんどインチキだという話になります。
その上で、であれば、本当に本を速く読めるようになるためにはどうすればいいのかという話まで解説させてもらいます。

魔法のような速読が存在しない理由についてですが、いわゆるフォトリーディングや速読のテクニックについて調べた研究はたくさんあります。

例えば、このフォトリーディングというものは、写真を撮るかのように本の内容を潜在意識に写しこんで、それにより速読ができて1冊1分で読むことができるというようなまさに魔法のようなテクニックです。

このテクニックが本当に使えるのかということに関しては、1999年にオールドドミニオン大学がランダム化比較試験(RCT)という結構精度が高いとされている研究を行っています。

この研究では、150人の男女を対象に、その半数の人たちにフォトリーディングのトレーナーが1週間のレクチャーを行い、残りの半数には特に何もしてもらえませんでした。
その上で速読のトレーニングを受けた人たちとそうでない人たちでどのような違いが現れるのかということを調べようとしたものです。

その結果、両グループには何の違いも認められなかったということです。
文章の理解力においても、本を読む時間においても、普通に本を読むことと比べて有意差はありませんでした。

怪しいビジネスに騙されないように!

速読に関しては、このような研究結果がたくさんあります。
これは冷静に考えると当然なことで、そのような速読ができる人は速読のテクニックを教えようとはしますが、それにより本の知識を得て自分で稼ごうとはしません。

僕がもし今より3倍速く本を読むことができたら今より10倍稼ぐ自信はあります。
本をそんなに早く読むことができるのであれば、本をたくさん読んで、その本から得たたくさんの知識を使いビジネスをした方が絶対に儲かるはずです。
にもかかわらず、速読ができると言い張っている人たちは、速読を教えるビジネスしかしません。

このような話をすると、その研究では1週間しかトレーニングをしていないからであって、速読のテクニックというものはもっと奥が深いもので、1年や2年頑張ってできるようになるものだというようなことを言う人もいるかもしれません。

例えば、彼らは速読の練習をすることによって、普通であれば1冊読み切るのに2時間ぐらいかかる本が1分で読み終わるというようなことを言います。
そうなるとそれは処理速度が120倍です。

筋トレであれば、最初は10 kg や20 kg のバーベルしか持ち上げることができないけれど、1年や2年続けて頑張って鍛えて体を作れば確かに100 kg のバーベルを持ち上げる可能性はあります。
とはいえ、200 kg を持ち上げられるようになるかというと結構怪しくなってきますし、300 kg になるとほぼ無理だと感じるはずです。

つまり、人間の処理能力というものは練習したからといって120倍にもなることは、どう考えても現実的ではないのではないかということです。

読書スピードは遺伝子で決まる?!

実際に、その読書スピードというものが何で決まるのかということを調べた研究があります。

もしそれで読書のテクニックや方法などによって読書スピードが大きく変わり、読み方によって読書スピードは大きく変わるというのであれば、確かにそれは速読を練習する必要があるかもしれないし、速読を練習することによって早く読むことができる可能性があると言えると思いますが、なんと読書スピードというものは、そのほとんどは皆さんの遺伝子により決まっています。

生まれた瞬間に皆さんの本を読むスピードというものはほとんど決まっているということです。

だからといって、その100%が遺伝子で決まるというわけではありませんので、今回はどうすれば少しでも早めることができるのかという話も紹介させてもらいます。

この研究は2010年にオハイオ州立大学が行った研究で、135人の遺伝子が全く同じ双子である一卵性双生児の人と、179人の二卵性双生児の人を対象に読書スキルについて調べています。

つまり、遺伝子が同じ双子の人たちの読書スキルや読書スピードがどれぐらい違うのかということと、遺伝子が異なる双子の人たちの読書スキルや読書スピードがどれくらい違うのかということを調べたら、本を読むスピードや読書に対する理解力というものがどれくらい遺伝子によって左右されるものなのかということがわかるという研究です。

それぞれの双子の人たちを集めて幼稚園の時点で90分間の本を読むテストを行っています。
その2年後に追試を行い、どのように読書スキルが変わるのかということを調べることにより、この本を読む能力というものが遺伝によって変わってくるものなのかそうではないのかということを調べようとしたものです。

その結果分かったこととしては、まずひとつめとして、言語能力と文字を認識する能力というものは遺伝の要素が1/3を占めていました。

言語能力と文字を認識する能力の1/3は遺伝による

遺伝の要素が1/3ぐらいということですから、文字を認識するスピードや言語を身につけるということに関しては1/3は遺伝で決まり、残りの2/3は他の要素によって決まってくるということになりますから、やはり、語学なども練習していけば身につけていくことができます。
練習したり努力すれば英語や他の言語も身につけることができるというのは、皆さんも理解できることでしょうし頷ける話だと思います。

そして、単語を見てその意味をちゃんと想像する能力であるボキャブラリーの理解度に関しては、遺伝と環境の要素が1/2ずつぐらいでした。

ボキャブラリーの理解度の1/2は遺伝による

なんと遺伝子で1/2も決まってしまうということです。
残りの半分は環境や努力によるものですから、良い友達と付き合ったり良い環境にいればボキャブラリーの理解度も高まる可能性はあるということになります。
これはまだ半分は努力で埋めることができるということです。

では、読書スピードはどうなのでしょうか。
なんと読書スピードというものは遺伝子により3/4が決まっているということです。

読書スピードの3/4は遺伝による

つまり、皆さんの本を読むスピードの75%は遺伝子で決まっていて、生まれた瞬間に75%が固定されているということです。
どうにかすることができるのは残りの25%だけしかないということです。

ですから、テクニックや技術を学んだぐらいでいきなり読書スピードが飛躍的に伸びるということはあり得ないということです。

僕はおそらくインチキだとは思いますが、百歩譲っていわゆる速読というものが存在したとしても、速読で有名な人や速読の世界チャンピオンのような人たちは、この75%の遺伝子が極めて恵まれているのではないかと思います。
それを教えてもらっても彼らのようなスピードは出ない可能性が高いです。

僕たちは残りの25%をどのように鍛えていけばいいのかということを考えていくしかないということがこの研究から分かる内容です。

速読についての本もたくさん出ています。
これを学べば誰でも1冊1分で読むことができるという本があれば、自分もこれで本を早く読むことができるようになるのではないかとワクワクしながらその本を読むかもしれませんが、もしウサイン・ボルトさんが私が書いた本をあなたも読めば100 m の世界記録に迫れると言われても、絶対にそんなことできないと答えるはずです。

読書スピードというものは目に見えないものです。
この目に見えないものに対しては人間は希望を抱きやすくなります。それを間違った方向に使っているビジネスがおそらくは速読を教えるビジネスなのではないかというような闇が見える研究でした。

読書スピードを速めるために僕たちにできることとは

読書スピードの75%が遺伝子で決まっているということですから、本を読むスピードが遅いからといって悩む必要はありません。
本来、僕たちが技術として習得することができる速読というものは明らかになっています。

本を読むスピードが速い人は、スキミングという自分にとって必要な箇所を本の中から見つける能力が高い人です。
つまり、読む能力ではなく探す能力の高さであり、これは鍛えることができる能力です。

そして、人は本を読むときに、単語や文章を拾いそれを頭の中でつなげて意味を理解しています。
当然ですが、文章を読む時にその文章をそのまままるごと頭の中に入れて理解しているのではなく、その文章を単語や文章のつながりに分けて頭に入れて、それが頭の中で繋がって意味になっています。

この単語をつなげて意味にするスピードというものも重要になり、この探す能力の高さとつなげて意味にするスピードの2つが読書スピードを決めています。

ということは、答えを探す能力であるスキミングの能力と言葉をつなげて意味のある文章にする能力の2つだけを鍛えれば、読書スピードを上げることはできるわけです。

これはもちろん1冊1分で読めるような魔法のような速読ではありませんが、明らかに本を読むスピードは速くなります。

難しい本も読めるようになるためのおすすめ本

今回のお勧めの本としては難しい本も読めるようになるためにとても役に立つであろう本を紹介しておきます。

難しい本をちゃんと読み解くためにはじっくり読む必要があり精読というテクニックが必要になります。
そんな方法と本当に使える速読のテクニックについて解説しているとても稀な本です。
速読関係ではこれが唯一自信を持って勧めることができる本です。